馬の字


 

 る人、馬を借りようと思い、馬の持ち主に手紙を一通したためた。
「小生、外出の件あるにつきまして、駿足一騎拝借つかまつりたくそうろう」
 それを受け取った持ち主、
「はて?駿足とは何でござるか」
 と首をかしげる。答えるに、
「馬のことでございます」
 すると、持ち主、
「何と動物にも字(あざな)があるのか」

(明『笑府』)