再世夫婦


 

 の萬暦年間(1573〜1620)のことである。
 沂州(ぎしゅう、注:現山東省)に馮憲(ふうけん)という諸生がいた。妻の高氏は二男一女を残して病死した。その数年後、同郷の李天福の家に娘が生まれた。
 娘は四歳になると、わけもなく毎日泣いてばかりいるようになった。その理由を問うと、
「私は前世では馮憲の妻でした。某年某月某日に病気で亡くなりました。息子が二人と娘が一人おります」
 と答えた。この話を伝え聞いた馮憲と子供達が、早速、李天福の家を訪ねてみた。すると、幼女が馮憲の着物の裾をつかんで泣いた。
「あなた」
 幼女は前世の話をしたのだが、すべて一々符合する。
「私の金の腕輪が何処其処(どこそこ)にあるはずでございます」
 と言うので、調べてみるとその通りであった。
 馮憲はこの幼女こそ亡き妻の再生したものと認め、李転福に縁談を申し入れて抱いて連れ帰った。左手のつぼに鍼(はり)を打ったところ、前世のことを口にしなくなった。そして、十五歳になるのを待って夫婦となった。二度目の結婚で娘を一人なした。

 沂州の人々は馮憲夫婦を「再世夫婦」と呼んだ。

(清『巾箱説』)