黄鶴楼


 

 環(じゅんかん)が江夏の黄鶴楼に登った時のことである。
 西南の方角を眺めていると、何やらフワフワと大空から降りてきた。それは鶴に乗った仙人であった。やがて鶴は扉のそばに舞い降り、仙人は楼閣の中に入ってきた。仙人は羽衣に虹色の裳(もすそ)を着けていた。
 しばらく歓談してから仙人は鶴に乗って飛び去った。その姿は遥か彼方で見えなくなった。

(六朝『任ム述異記』)