痴 情


 

 僧達(おうそうたつ)の族子確は年若く、美貌であった。僧達はこれを熱愛し、二人は道ならぬ関係を結んだ。
 確の叔父休が永嘉太守となり、確を連れて赴任することになった。僧達は別れたくないがために、確に自分のもとへ留まるよう迫った。しかし、確はこれを機に今までの関係を清算するつもりだったので、僧達を避けるようになった。
 僧達は深く恨み、ひそかに自邸の裏庭に大きな穴を掘った。別れ話にことよせて確を呼び出し、殺してここに埋めるつもりであった。
 従弟の僧虔(そうけん)はこのことを知ると、説得して思いとどまらせた。

(六朝『宋書』)