樗 蒲


 

 、ある人が馬に乗って山に入った。遥か向こうの洞窟で二人の老人が向かい合って、樗蒲(ちょぼ、博打の一種)をしているのが見えた。その人は側まで行って馬を下り、鞭を地面について見物した。
 しばらくしてふと気がついて鞭を見てみれば、何とボロボロに朽ちている。あわてて馬を顧みれば、馬は骨ばかりになっており、その上に朽ちた鞍が載っていた。
 不思議に思いながら歩いて家に帰ったところ、家族はもちろん親族も死に絶えていた。
 その人はアッと叫んでそのまま息絶えた。

(六朝『異苑』)