野ざらし


 

 平(浙江省)の農村に住むなにがしが野原で草刈りをしていて、たまたま一つのどくろを見つけた。なにがしは憐れに思って、土に埋めてやった。そして、帰宅すると、

「今日はよいことをした」

 と、家族にどくろを埋めたことを話して聞かせた。その時、突然、なにがしは悪寒に襲われてふるえがとまらなくなり、うわごとを発した。

「おれは広い野原で気楽に過ごしていたのに、よくも土に埋めてくれたな。うっとうしいったらありゃしない。よけいなことをしやがって、こいつ、ぶっ殺してくれるわい」

 どうやら幽鬼にとりつかれたらしい。家族はあわてて酒や料理、紙銭を供えた。数日もすると、幽鬼は去った。なにがしは十日あまりして癒えた。

(清『右台仙館筆記』)