太原の廟学
太原(たいげん、現山西省)の廟学(びょうがく)には女の幽鬼が住みついていた。生前は宋の提刑の妾で、正妻に折檻されて死に、廟学の傍らに葬られた。桑の生えているところが、その葬られたところだという。幽鬼は時折、斎舎に入って人と言葉を交わすこともあったが、決して祟りをなすようなことはなかった。
大定年間(1161〜1189)のことである。数人の学生が斎舎に泊まり込んで試験勉強をしていた。三更(夜十二時頃)を過ぎた頃、窓の外でかすかに足音がした。やがて眠っている学生達の体を誰かが撫でては、
「この人は及第、この人は落第」
と、言うのが聞こえた。やがて、声の主は、
「驚かないでね」
と言って立ち去った。
その年の試験の結果は、この言葉のとおりであった。
(金『続夷堅志』)