杜 生


 

 の先天年間(712〜713)のことである。許州(河南省)に杜生(とせい)という人がいた。占いをよくし、神業のように的中した。

 ある人が奴隷に逃げられた。杜生に占ってもらうと、

「街道を通ってお帰りなさい。途中で文書を運ぶ使者に会います。よい鞭を持っているので、貸してくれるよう頼むのです。貸してくれなかったら、私がそうしろと言ったと話しなさい。きっと貸してくれますよ」

 と言う。

 その人が言われたとおりにすると、果たして途中で使者と出会った。杜生のことを話して鞭を貸してくれるよう頼むと、使者はたいそう不思議がり、

「別に鞭を惜しんでいるわけではない。ただ、あんたにこの鞭を貸してしまったら、これから先、馬の尻を叩くものがなくなってしまう。そうだ、路を左に曲がったところに木があるから、枝を一本折ってきてくれないか。鞭の代わりにするから」

 と言った。その人が枝を折りに行くと、逃げた奴隷が木の陰に隠れていた。その場で捕らえて何をしているのかと問えば、

「ここまで逃げてきたら、遠くに旦那様のお姿が見えましたので、隠れていたのです」

 とのことであった。

 また別の人が奴隷に逃げられ、杜生に占ってもらうと、

「帰りに五百銭を用意して、官道で献上用の鷹を運ぶ使者が通るのを待ちなさい。その使者から五百銭で一羽買えば、きっと奴隷は見つかりますよ」

 その人が言われたとおりに官道で待っていると、鷹を運ぶ使者が通りかかった。事情を話して一羽売ってくれるよう頼んだ。すると、その使者はおおいに不思議がり、予備の鷹を売ってくれることになった。鷹を受け取ろうした時、突然、鷹は手を離れて、草むらに向かって飛び去った。その人が後を追うと、草むらに逃げた奴隷が隠れていた。

 杜生はよく人の出世も言い当てたが、その事例はあまりにも多いので、ここには書かないことにする。

(唐『紀聞』)