真如寺の猫


 

 州の東に真如(しんにょ)寺という寺院がある。
 弘治年間(1488〜1505)、この寺に景福という僧がおり、猫を一匹飼っていた。日頃からよく馴れていて、景福が外出する際、いつもこの猫に寺の鍵を預けておいた。戻った時、門を叩いて呼びさえすれば、猫が鍵をくわえて塀の穴から出てきて主人に渡した。
 もしも他人が門を叩いたり、呼んだりしても、猫は決して外に出てこないのであった。

(明『七修類稿』)