雨宿り


 

 の夜、老婆が糸を紡いでいた。手元に置いておいた目打ちが見当たらず、老婆は舌打ちした。
「どこの厚かましい幽鬼が盗んだかねえ」
 すると、戸外から声が返ってきた。
「軒先で雨宿りをさせてもらっておりますが、盗みなんてしていませんよ。もっとよく探してごらんなさい」
 老婆が慌てて外に出てみると、誰もいない。目打ちは間もなく見つかった。

(六朝『異苑』)