甕
とても貧しい男がいた。財産といえば、ずっと前に買った甕(かめ)が一つあるだけであった。 男は、夜、唯一の財産である甕の中で寝ながら考えた。 「この甕を売ればいくらかになるだろう。多分、買った時の倍の値段にはなっているはずだ。その金で甕が二つ買える。同じ方法で甕を四つ買えばい い。四つが八つになって、八つが十六に…おおっ!この方法ならいくらでも儲けられるぞ」 男は嬉しくなって思わず飛び上がった。その途端、甕は粉々に砕け散った。 (六朝『殷芸小説』)
とても貧しい男がいた。財産といえば、ずっと前に買った甕(かめ)が一つあるだけであった。 男は、夜、唯一の財産である甕の中で寝ながら考えた。 「この甕を売ればいくらかになるだろう。多分、買った時の倍の値段にはなっているはずだ。その金で甕が二つ買える。同じ方法で甕を四つ買えばい い。四つが八つになって、八つが十六に…おおっ!この方法ならいくらでも儲けられるぞ」 男は嬉しくなって思わず飛び上がった。その途端、甕は粉々に砕け散った。
(六朝『殷芸小説』)