男、女に変ず


 

 西太原府静楽県に李良雲、良雨という兄弟がいた。兄弟ともに結婚しており、その暮し向きは非常に貧しかった。
 嘉靖四十五年(1566)、良雨は二十歳あまりになっていたが、突然、胸の病にかかり、働くことができなくなった。仕方なく妻の張氏を他家へ嫁がせた。
 良雨には白尚相という親友がいた。尚相は良雨の病と貧しさを憐れみ、自宅に連れ帰って面倒を見た。
 隆慶元年(1567)、良雨の体に異変が起きた。股間の一物が縮んで女のようになってしまったのである。その上、月のものまで始まった。体の変化とともに胸の病は癒えた。女の体になった良雨は尚相と関係を結び、夫婦のように暮らした。
 良雲の妻がこれに不審を抱いた。良雨はつつみかくさず兄嫁に告白し、兄嫁はこの事実を夫の良雲に告げた。良雲は驚いて県の役所に訴えた。役所で調べてみると、良雨の体は確かに女である。元妻の張氏を召し出して、過去の結婚生活について問いただした。
「その方の前の夫、李良雨はまことに男であったか?もしや、何か支障があってその方は他家に嫁ぐことになったのではないか?」
 張氏の答えはこうであった。
「前の夫は立派な男でございました。今の夫よりも元気で、私どもの夫婦生活には何の支障もありませんでした。貧しい上に夫が病み、暮らしていくことができなくなったので、私は他家へ嫁いだのです」

 この不思議は都へも報告された。隆慶二年(1568)八月十三日のことであった。

(明『賢博編』)