滋 養


 

 村(現江蘇省)の漁師の女房が肺病にかかった。ほかの村人にも伝染し、何人も亡くなった。
 ある人が言った。
「次に病人が出たら、生きていようがいまいが、棺おけに入れて河に流してしまえ。さもないと、村は滅びるぞ」
 しばらくして、その人の娘が病にかかった。父親は言葉どおりにまだ息のある娘を棺おけに入れて河に流した。
 金山(現江蘇省)の漁師が河に出ると、上流から棺おけが流れてきた。不思議に思い、岸に引き上げて蓋を開いてみると、娘が横たわっている。死んでいるのかと思ったが、まだかすかに息が通っていた。漁師は娘を連れ帰って看病することにした。漁師は毎日、鰻を捕って娘に食べさせた。しばらく食べ続けるうちに、娘の病は治ってしまった。娘は漁師の恩義に感じ入り、その妻となった。

 今でも娘は健在である。あれ以来、病気らしい病気をしたことはないという。

(宋『稽神録』)