の公女が斉(せい)の太子に嫁ぐこととなった。斉へ向かう途中、太子がすでに亡くなったことを知った。

「夫となる方は亡くなられた。私はどうしたらよいのだろう」

 公女はつき従ってきた乳母にたずねた。乳母は答えた。

「やはり、このまま行ってお弔いするべきでしょう」

 公女は太子の弔いをすませても帰ろうとせず、自ら命を絶ってその後を追った。乳母は弔いをするよう勧めたことを後悔した。そこで、公女がいつも弾いていた琴を墓の前で弾いた。その時、突然、墓の中からつがいの雉(きじ)が羽ばたき出た。乳母は雌の雉の背を撫でて言った。

「もしや姫様ではありますまいか?」

 その言葉の終わらぬうちに、つがいの雉は飛び立ち、たちまち見えなくなった。乳母は深く悲しんで琴を弾いた。それが『雉朝飛(ちちょうひ)』という曲である。

(宋『楽府詩集』)